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いいレースだったと思います、今年の宝塚記念。

「強い馬が強い勝ち方でレースに勝つ」。

今年のタップダンスシチーはそれくらい充実していた、と言えるでしょう。

鞍上の佐藤哲三騎手も、全身で喜びを表わしていましたね。

ムチもゴーグルもキャップだって全部観客席に放り投げて。

初めて見ました、あれほどに観客席に向かって喜びを表現したのは。

これで“男”が上がりましたね。

1996年、マイネルマックスの朝日杯3歳ステークス（現・朝日杯ＦＳ）から遠ざかっていたＧ１の勲章。

昨年のジャパンカップの優勝はフロックとも言われましたが、

今年は違う。他の馬とは違う雰囲気を感じました。人馬一体とはこういうことを言うんでしょう。

 

しかし、今年の4歳。過大評価だったといわざるを得ないと思います。

正直、シンボリクリスエス、ネオユニヴァースと“勝ち抜け”されて、

実質“敗者復活戦”みたいな感じの古馬戦線。

唯一土をつけたタップが勝つべくして勝ったとは思いますけど、

正直これから出てきても、リンカーン以外に成長は見込めないと思いますし、

5歳以上の古馬や、キングカメハメハの3歳と当たったときにも勝てる見込みも見えません。

“一線級”以外には勝てるとは思いますけどね。

さて、タップダンスシチー。

日本競馬に警鐘を鳴らす使者なのか、はたまた突然変異なのか。

彼の血統表です。

タップダンスシチー	Pleasant Tap	Pleasant Colony	His majesty	Ribot
				Flower Bowl
			Sun Colony	Sunrise Flight
				Colonia
		Never Knock	Stage Door Johnny	Prince John
				Peroxide Blonde
			Never Hula	Never Bend
				Hula Hula
	All Dance	Northern Dancer	Nearctic	Nearco
				Lady Angela
			Natalma	Native Dancer
				Almahmoud
		All Rainbows	Bold Hour	Bold Ruler
				Seven Thirty
			Miss Carmie	T.V.Lark
				Twice Over

日本ではまず手を出しにくい配合だと思います。

ＰＯＧをやっていれば、絶対に触手は伸びません（笑）。

母のAll Danceが19歳のときに産まれたタップ。

兄姉はそこまで活躍もせず、どこに見出すものもなく、

探すとなれば、All Danceの7歳下の妹Winning Colorsが、

牝馬ながらケンタッキーダービーを制したという牝系が目を引くくらいです。

ちなみにWinning Colorsの仔がゴールデンカラーズ。POGではよく出てくる名前ですね。

父系は日本では傍流中の傍流。かつての栄華を誇った系統。

「ドルメロの魔術師」と呼ばれたイタリアの馬産家、フェデリコ・テシオの最高傑作。

16戦16勝。凱旋門賞2連覇。当時の中距離G１を総ナメにした、その馬の名はリボー。

イタリアの至宝とまで呼ばれた彼は、

5年間の約束でアメリカに種牡馬としてリースされたのですが、

環境の違いで気性が激しくなって、そのせいでイタリアに帰ることもできず、

遠い異国の地でその生涯を終えています。

 

しかし、その“血”は絶えることなく、現在も生き続けています。

プリークネスＳ（米3冠の第2戦）勝ちのTom Rolfe

（ちなみに第1戦のケンタッキーダービーは3着、第3戦のベルモントＳは2着でした）、

Graustark、His Majestyの全兄弟、ベルモントＳのArts And Lettersなどが、

彼の血を今に残しています。

Tom Rolfeからは、あの最強時代のナリタブライアンに京都新聞杯で唯一土をつけた、

スターマンの父ワイズカウンセラー、

96年エリザベス女王杯2着、フェアダンスの父フェアジャッジメント、

アレミロードなどが日本に入ってきています。

Graustarkからはジムフレンチを通じて1982年日本ダービー馬バンブーアトラス、

そしてバンブーアトラスからは1989年菊花賞馬バンブービギンが出ています。

そしてHis Majestyは、良い競争成績ではありませんでしたが、

全兄のGraustarkのおかげで種牡馬になれました。

しかし、兄に勝るとも劣らない種牡馬成績。きっちり系統を伸ばしています。

その後継種牡馬がPleasant Colonyです。

ケンタッキーダービー、プリークネスＳと米2冠。サンデーサイレンスと同じですね。

2004年ドバイワールドカップ勝ちのPleasantly Perfectを筆頭に、

1993年父の無念を晴らしたベルモントＳを勝ち、2003年に日本産駒がデビューするColonial Affair、

1992年キングジョージ6世＆クイーンエリザベスＳにアイルランドダービー勝ちのSt.Jovite、

1992年ジョッキークラブＧＣ勝ち、ＢＣクラシック2着のPleasant Tap、

つまりタップダンスシチーの父を世に送り出しました。

さてこのPleasant Tap、晩成馬です。

ケンタッキーダービーこそ3着に入ってはいますが、本領発揮は5歳時。

10戦のうち初戦こそ着外ですが、1着5回2着4回という成績。

昨年からのタップの成績に近いものがありますよね。

といっても、タップはかなり孝行息子。一口馬主になった人、かなり相馬眼あります。

現時点で35戦11勝、2着5回、3着7回、4着2回、5着6回。

掲示板を外したのは4回のみ。

どうです？　実はタップはすごかったんですね。

 

それに今年のG1戦線を見ていて思ったのは、

フェブラリーS優勝：アドマイヤドン（父Mr.Prospector系ティンバーカントリー、母ベガ）

高松宮記念優勝：サニングデール（父Man'o War系ウォーニング、母カディザデー）

桜花賞優勝：ダンスインザムード（父SS、母ダンシングキィ）

皐月賞優勝：ダイワメジャー（父SS、母スカーレットブーケ）

天皇賞春優勝：イングランディーレ（父リファール系ホワイトマズル、母マリリンモモコ）

ＮＨＫマイルＣ優勝：キングカメハメハ（父Mr.Prospector系Kingmambo、母マンファス）

オークス優勝：ダイワエルシエーロ（父ＳＳ、母ロンドンブリッジ）

ダービー優勝：キングカメハメハ（父Mr.Prospector系Kingmambo、母マンファス）

安田記念優勝：ツルマルボーイ（父ＳＳ系ダンスインザダーク、母ツルマルガール）

こう見ていくと、ＳＳ系はまだ勢いがあるように思いますが、

やはりミスプロ系の台頭もちらほらと見え始めています。

アフリート、ジェイドロバリー、ティンバーカントリー、フォーティーナイナーと

ダート適性の強そうな日本のミスプロ系でしたが、

エンドスィープやKingmamboを通じてとうとう芝にも台頭か、と。

しかし、それらをも駆逐したリボー系のタップダンスシチー。

今年のドバイワールドカップ馬Pleasantly Perfectもリボー系でした。

ドでかいところでリボーの復権は起こるのか。

今年の凱旋門賞は注目です。