昔、投稿天国でかな〜りマニアな競馬コラムを書いて、 かな〜りマニアな人のみにウケていた、『競馬のけ』の作者、“みやっち”。 そのコラムを通じて知り合うことになり、毎晩のように競馬談義に花を咲かせる お好み焼き屋、“ぐっさん”。 二人の「福井の隠れ競馬ファンと知り合って、競馬のロマンについて語り合いたい」という、 たったそれだけの想いで始まったこのサイト「競馬鹿人生」。 今夜も ぐっさんの店で競馬談義が始まった!
やっとロンシャンスペシャルできました。 |
福井の競馬ファンに捧ぐ みやっちだけの“競馬鹿人生” 第18話 「コスモバルクのお母さん」 (2004/04/27 PM5:50更新)
まだ天皇賞の予想まで時間が有るので、つらつらと書いてみました。乱筆お許しを。 |
皐月賞、ダイワメジャーでしたね……。
よくよく考えれば、「スカーレットブーケの仔」と考えてたら獲れたのではないか、とも思いましたが、
「ザグレブ産駒」、「外厩制度第1号のクラシック」、「ホッカイドウ競馬の星」なーんて言葉に、
ロマン派としてはついつい手が出てしまった、ということなのかな。
でもコスモバルクは強かった。
負けて強しですよ。いやほんとに。
血統なんかすごいんですから。
母系を遡ると、多重クロスになっているのがわかります。
下の血統表はコスモバルクの母、イセノトウショウです。
イセノトウショウ | トウショウボーイ |
テスコボーイ | Princely Gift | Nasrullah |
Blue Gem | ||||
Suncourt | Hyperion | |||
Inquisition | ||||
ソシアールバタフライ | Your Host | Alibhai | ||
Boudoir | ||||
Wisteria | Easton | |||
Blue Cyprus | ||||
マルミチーフ | ビッグディザイアー | トライバルチーフ | Princely Gift | |
Mwanza | ||||
クリアヤメ | ゲイタイム | |||
クリヒデ | ||||
トキワアイゼン | キタノカチドキ | テスコボーイ | ||
ライトフレーム | ||||
トキノマサト | ガーサント | |||
アサヒニシキ |
つまり、イセノトウショウはPrincely Giftの3×4×5、
テスコボーイの2×4ということになります。
同じ馬が血統表内にあることを「インブリード(英語で書くと「in bleed」、
つまり「血(同じ血)が入ってますよ」という意味)」といいます。
多分、昔流行った「奇跡の血量」理論が生んだ結果なんでしょう。
ここで「奇跡の血量」理論を説明すると、
「 5代血統表の中に同じ馬が3世代目と4世代目に入っていると、クロスする馬の能力が高い確率で遺伝され、その馬に爆発力が生まれる」
という理論でした。上記の血統表にあるテスコボーイの母父Hyperion(1930年生まれ)は、
19世紀の名馬St.Simonの3×4という血統で、とてつもない破壊力を持っていました。
それだけに、世のホースマンたちはこぞって3×4にこだわり続けてきたのです。
この理論、結構前から盛んに言われていたんです。まだ“科学の目”が無かった頃でしたし。
時には3×3や2×3など、生態系をほとんど無視したような配合まで登場しました。
それほどまでに、“強い馬”を持つという名誉が欲しかったんですよ。
リスクなんかありませんでしたから。まだ競馬は貴族の道楽の一つでしたからね。
強い1頭の馬のためなら100の屍さえも平気で作る時代だったわけです。
でもまぁ、その頃は世の中に3×4の馬がたくさんいたわけですから、
名馬がそこから生まれると、「奇跡の血量だ!」となるわけです。
現在では「奇跡の血量」が何の意味も持たないと言われていますが、
当時生まれた多くの馬は何かしらのインブリードを持っていました。
そしてイセノトウショウもまたしかり、ということなのです。
しかし、現在ではこんなに濃いクロスはあまり生産することはありません。
濃すぎると逆に弊害が起きるんです。競走馬として走れない、という弊害が。
イセノトウショウも実は不出走なんです。走れなかったのかもしれませんね。
それでも最近1頭すんごいのがいました。エルコンドルパサーです。
同じ母父の姉妹クロス2×3に、3代目に同じ馬がいるという馬を掛けましたからね。
普通はやんないですよ。オーナーブリーダー(ダビスタのプレイヤーのような感じ)だから、
そんな無茶なことできたんですけど。でも、競馬の最高峰、凱旋門賞で2着。
ただ、弊害はその後に起きました。
種牡馬になって3年後、この世を去ったのです。早過ぎた死でしたが、
自然がそういう存在を許さなかった、のかもしれません。
で、テスコボーイの話ですが、
テスコボーイが輸入された時代の日本競馬は、その多くがスタミナ血統であり、
長距離レースに強い馬がもてはやされていたんですよ。
しかし、競馬の先進国である欧州ではいわゆる“スピード革命”が起きていたわけです、
ある1頭の馬が出現して。
その馬はスピードの絶対値が他とは違っていたのですが、
気性が激しく、競走馬としては大成しませんでした。
しかし、血統背景を見込まれ種牡馬になったその馬の名前はNasrullah(ナスルーラ)といいました。
Princely Giftはその仔です。そしてテスコボーイはその孫に当たります。
Princely Giftは23戦走って9勝という平凡な馬でしたし、テスコボーイにしてみたら11戦して5勝。
でも日本競馬にはなかった血統背景でした。
日本競馬が世界の時流に乗るための、まずは第一歩だったわけです。
そしてこれが大爆発するんですよ。日本競馬にスピード化をもたらしたんです。
そしたら日本の生産者、世界のPrincely Gift系の種牡馬買い漁っちゃって。
そのうちに世界でPrincely Gift系は日本だけになっちゃったんですね。
で、テスコボーイの最高傑作とも言えるのが、
「TTG」時代を築いた1頭、トウショウボーイです。
トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスという3強がひしめきあった1976年、
競馬に一大ムーヴメントが巻き起こりました。
その中でもトウショウボーイはその年の皐月賞、有馬記念、翌年の宝塚記念を優勝します。
種牡馬としても3冠馬ミスターシービーを輩出しました。
しかしそこからが続かなかった。
ですが、テスコボーイは他の馬を通じてサイアーラインを伸ばして行くのです。
天皇賞馬・サクラユタカオーを輩出し、そこからスプリント王・サクラバクシンオー、
そして高松宮記念馬・ショウナンカンプと、内国産3代G1制覇を成し遂げ、
Princely Gift系を存続させています。
今年、コスモバルクの弟がデビューします。中央で走るか地方で走るかはわかりません。
しかしバルクの成績を見る限り、もしかしたら中央に出てくるかもしれません。
弟の父はシンボリルドルフです。