昔、投稿天国でかな〜りマニアな競馬コラムを書いて、 かな〜りマニアな人のみにウケていた、『競馬のけ』の作者、“みやっち”。 そのコラムを通じて知り合うことになり、毎晩のように競馬談義に花を咲かせる お好み焼き屋、“ぐっさん”。 二人の「福井の隠れ競馬ファンと知り合って、競馬のロマンについて語り合いたい」という、 たったそれだけの想いで始まったこのサイト「競馬鹿人生」。 今夜も ぐっさんの店で競馬談義が始まった!
やっとロンシャンスペシャルできました。 |
福井の競馬ファンに捧ぐ みやっちだけの“競馬鹿人生” 第20話 「ジャパンカップの再現か!?」 (2004/05/02 PM6:53更新)
天皇賞があんな形で終わったので、思わず書いてしまいました。乱筆お許しをm(_ _)m |
まいりましたね……。
イングランディーレですか……。
誰も“鈴”を付けに行かないで、後ろの方で牽制し合ったからこその逃亡劇。
今テレビを見ていて解説者が「こんな良馬場でこういうことが起きたのなんて、
記憶を遡っても見当たりませんよー」と嘆いていました。
そこへすかさず元ジョッキーの調教師が、
「この時期は芝が深いですから」。
つまり、脚を取られる、というやつですね。
で、レースを見て思い出したんですよ。昔逃げてクラシックを2つも獲って行った馬がいたことを。
セイウンスカイ。
既に種牡馬として見放され、行方知れずになりかけたシェリフズスターという馬から、
突如として現われた2冠馬でした。
「早い馬が勝つ」という皐月賞、「強い馬が勝つ」という菊花賞を、
まんまと逃げ勝ってしまったんです。
そのときの鞍上こそ、今回のイングランディーレの鞍上、横山典弘でした。
いやー、人気薄を逃がすと上手い。
実力うんぬんじゃあないですよ、展開のアヤですよ。
まるで昨年のジャパンカップ・ターフを見ているような感じでした。
でもイングランディーレの血統表、まとめてみました。
イングランディーレ | ホワイトマズル |
ダンシングブレーヴ | Lyphard | Northern Dancer |
Goofed | ||||
Navajo Princess | Drone | |||
Olmec | ||||
Fair of the Furze | Ela-Mana-Mou | ピットカーン | ||
Rose Bertin | ||||
Autocratic | Tyrant | |||
Flight Table | ||||
マリリンモモコ | リアルシャダイ | Roberto | Hail to Reason | |
Bramalea | ||||
Desert Vixen | In Reality | |||
Desert Trial | ||||
ピーチクリアー | ノーザンテースト | Northern Dancer | ||
Lady Victoria | ||||
シャダイクリアー | ガーサント | |||
ペルルピーチ |
Northern Dancerの4×4ですが、だからといって強い影響があるわけではありません。
おじいさんのダンシングブレーヴは、1986年の凱旋門賞をレコード勝ち。
1980年代の最強馬とも謳われたほどの名馬でした。
しかし、種牡馬になってから「マリー病」という重い病にかかってしまいます。
それほど有力馬を出さずに病気になったものだから、
これみよがしに、日本の生産者は手を出したわけです。
1992年、日本に輸入されました。
しかし、世界的な名血を、日本で終わらせるわけにはいかないと、
日本の生産者は懸命の努力をしたわけです。
現在では毎年200頭にまで上る種付けを、毎年50頭まで抑えながら、
彼の血を絶やさないようにしたわけです。
彼もまた、その期待に答えるように、エリモシック(エリザベス女王杯)、キョウエイマーチ(桜花賞)、
キングヘイロー(高松宮記念)、テイエムオーシャン(阪神3歳牝馬S、桜花賞、秋華賞)と
次々とG1馬を送り出しました。
そして皮肉なことに欧州では、日本に輸出した翌年の1993年、
コマンダーインチーフがイギリス、アイルランドのダービーを制し、
そしてイングランディーレのお父さん、ホワイトマズルがイタリアダービーを制したのです。
欧州では地団駄を踏みましたよ、かなり。
「何でダンシングブレーヴをとっとと日本に輸出してまうんやってー!!」って。
でも、この手の話は、種牡馬の世界ではよくあることです。
前回のコスモバルクのお父さん、ザグレブだってそうでした。
3戦目にしてアイルランドダービーを制した名馬だったのに、
4年経っても後継種牡馬になりそうな馬が出ない。
それなら欧州から買戻しのオファーもきていることだし売ってしまおう、と
売った途端にコスモサンビームが朝日杯FS(2歳G1)とコスモバルクが登場しましたから。
で、ホワイトマズルですが、
ダンシングブレーヴ産駒が日本で良く走るからと、
コマンダーインチーフ(1994年輸入)に続き、1995年に輸入されます。
これがいかん。
結局有力なダンシングブレーヴ系統は、本馬合わせてぜーんぶ日本に来ちゃってる。
前回のプリンスリーギフトとおんなじことをやっちゃってるんですよ。
でもこの系統よく活躍馬出すんです。
コマンダーインチーフは初年度産駒から阪神3歳牝馬S(現在の阪神ジュベナイルフィリース)の
アインブライドを出すし、ダートではJBCクラシックのレギュラーメンバーを出すし。
そしてホワイトマズルはオークス馬・スマイルトゥモローを出しています。
でも、産駒は総じてダートで活躍するのが多いんです。
それにこの系統は牝馬の活躍馬が多いんです。
そこにきて今回の天皇賞優勝。
ダンシングブレーヴのキングヘイロー、
コマンダーインチーフのレギュラーメンバー、
そしてホワイトマズルのイングランディーレ。
系統的にまずは第一関門を突破した、のかな。
で、本馬イングランディーレですが、
昨年のダイヤモンドS(中山芝3200mのG3)、日経賞(中山芝2500mG2)を連勝してるんです。
で、直線不利のあった天皇賞・春の9着を挟んで、
交流重賞のブリーダーズGC(旭川ダート2300mG2)、白山大賞典(金沢ダート2100mG3)を
またまた連勝するんですよ。その前の年までただの条件馬だったのが一変。
まさに“晩成馬”です。その後差のない競馬を繰り返し、
今日を迎えたわけです。
基本的に2000m以上でないと実力が発揮できません。つまり“スタミナ血統”です。
かつて淀の3コーナーで散ったライスシャワー(菊花賞、天皇賞・春2回)という名馬がいましたが、
彼の父はリアルシャダイでした。
イングランディーレは母系からリアルシャダイの血を受け継ぎ、
“晩成スタミナ血統”になったのかもしれません。
で、ホワイトマズル産駒は1997年辺りから
ダートもこなす馬も出し始めます。
芝の適性もあるのですが、より高い芝適性の馬の産駒に追いやられて、
ダート戦線に活路を見出したのかもしれません。
でもダンシングブレーヴ譲りの闘争心が、
ダートを被ってもひるまない闘争心に受け継がれているのかもしれませんね。
イングランディーレもそうなのかも。
だから両方の重賞を獲ってしまうんですね。
多分次走は宝塚記念だと思いますが、次はないでしょ。
なんかタップダンスシチーみたいなんだもん。
最後にダンシングブレーヴの仔についてですが、
ダンシングブレーヴの直仔は、闘争心が強すぎるのか、
気性がかなり激しい馬だと思っています。
彼の血はぐっさんとの間でよく使っている言葉ですが、“狂気の血”です。
彼の血を多く受け継ぐと、短いところや障害レースでしか活躍できません。
サンデーサイレンス産駒でも短距離女王のビリーヴなど、時々見られる傾向にあります。
ダンシングブレーヴ産駒の中でも、キングヘイローは端的でしょう。
2400mをレコードで勝つ馬の仔が、なーんで1200mのG1を勝つの? って。
確かに母系は少し短いところのHaloですが、母母父はスタミナ血統のSirIvorですし。
キョウエイマーチもそうでしたね。
スピードだけで押しきった泥んこ馬場での桜花賞。
母父はブレイヴェストローマンでしたから、短くはなりましたけど。
このブレイヴェストローマンも“狂気の血”。
Wで“狂気”。一体この仔(父フレンチデピュティ、牝の2歳)はどんな仔になるんだろう。
今年のPOG(ペーパーオーナーゲーム)で取ってみたい気もします。